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ホームストーリー百物語_壱第9話
第9話
夜の百物語

鳴る鈴

第9話 / 100話まであと91話

2026/4/16約2分で読めます

夜の神社というのは、昼間とはまったく別の場所になる。

茂原の外れにある小さな神社を、帰り道に通ることがあった。人通りも少なく、昼間でも静かな場所だが、夜になるとその静けさは“音が消えた”ような不自然さに変わる。

あの日も、特に何も考えずに境内を横切ろうとしていた。

そのときだった。

「カラン……」

鈴の音が鳴った。

拝殿の前にある、あの参拝用の鈴だ。

反射的に足を止める。こんな時間に参拝する人がいるのかと思い、そちらを見る。

誰もいない。

風も吹いていない。鈴が揺れる理由はない。

しばらくその場に立っていると、もう一度鳴った。

今度はさっきよりもはっきりと。

「カラン……」

視線を向けると、そこに人が立っていた。

拝殿の前に、一人の人影。背中を向けて、まるで普通に参拝しているように見える。

だが、その姿にはどこか違和感があった。

動いていない。

鈴は確かに揺れているのに、その人影は一切動かない。腕も上げていないし、頭も下げていない。ただ立っているだけなのに、鈴だけが鳴っている。

ゆっくりと、その人影がこちらを向いた。

顔はよく見えない。だが、確実に“目が合った”と分かった。

その瞬間——

消えた。

音もなく、最初からいなかったかのように。

だが鈴だけは、その後もしばらく鳴り続けていた。

あの神社を通るとき、今でも無意識に視線を外してしまう。

もしまた目が合ったら、今度は——消えるのはこちらかもしれない。

#茂原,神社,夜,鈴,参拝,消失

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