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ホームストーリー百物語_壱第10話
第10話
夜の百物語

助手席の重み

第10話 / 100話まであと90話

2026/4/16約2分で読めます

夜の外房を車で走っていると、妙に感覚が鋭くなる。

街灯が少なく、対向車もほとんどない。自分の車のライトだけが道を照らし、その先に何があるのか分からないまま進んでいく。

あの日も、仕事帰りに一人で車を走らせていた。

ふと、違和感に気づいた。

助手席のシートベルトが、わずかに揺れている。

最初は路面の振動かと思った。だが、揺れ方が不自然だった。規則的ではなく、まるで誰かが触れているような動き。

視線を向ける。

誰もいない。

だが次の瞬間、シートベルトが「カチッ」と音を立てた。

まるで誰かが装着したように。

心臓の鼓動が一気に速くなる。

そのまま前を向き、運転を続ける。ミラーを見るのが怖かった。

だが、確認せずにはいられなかった。

バックミラーを覗く。

後部座席に、誰かが座っていた。

濡れたような髪、うつむいた顔。はっきりとは見えないが、“人”であることだけは分かる。

次の瞬間、その姿が消えた。

安堵する間もなく、助手席から重みを感じた。

隣に——座られている。

そのまま、家まで一度も横を見なかった。

エンジンを切り、恐る恐る助手席を見る。

シートは、確かに沈んでいた。

誰もいないのに。

#外房,車,助手席,人影,シートベルト,怪異

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