茂原の外れに、使われなくなった小学校がある。
立ち入り禁止にはなっているが、地元では有名な場所で、肝試しに入る人も少なくない。私も、その一人だった。
校舎の中は思った以上にきれいで、まるでつい最近まで使われていたかのようだった。
教室に入る。
そこにあった黒板を見て、足が止まった。
名前が書かれている。
白いチョークで、はっきりと。
それは——自分の名前だった。
冗談だと思った。誰かの仕込みかと疑った。だが、その字には見覚えがなかった。
気味が悪くなり、黒板消しで消す。
きれいに消えたのを確認し、教室を出た。
その日はそれで終わった。
だが翌朝、違和感に気づく。
手のひらに、白い粉がついている。
チョークの粉だ。
指でこすると、確かにあの感触だった。
そして、妙な確信があった。
あの黒板には、また書かれている。
今度は、消したはずの名前が——もっと濃く。
それ以来、あの場所には近づいていない。
自分の名前が、どこまで“残る”のか分からなくなる気がして。
