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第49話
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百物語|七夕顛末記 #07:出演者は、どうやって集めたのか

前例のない企画に「出る理由」をつくる

第49話 / 100話まであと51話

2026/5/11約4分で読めます
百物語|七夕顛末記 #07:出演者は、どうやって集めたのか

その頃、まだ委員会は存在していなかった。

正式に何かが決まっていたわけでもない。

「まぁ、進めてみてください」

その一言だけを頼りに、企画だけが先に走り始めていた。

今思えば、かなり危ない状態だったと思う。

でも、不思議と止まる気はしなかった。

むしろ、“今動かないと消える”みたいな感覚の方が強かった。

夜、自宅のデスクで一人、PCを開く。

モニターには、まだ粗い企画書。

タイトルだけやけに大きくて、中身は全然埋まっていない。

「七夕怪談ライブ」

自分で書いたその文字を見ながら、

“本当にやるのか、これ”

と、少しだけ笑ったのを覚えている。

最初にオファーを出したのは、牛抱せん夏さんだった。

理由はうまく説明できない。

でも、七夕の夜に怪談を置く景色を想像した時、この人だけは妙に自然だった。

茂原の夜。

屋台の灯り。

少し湿った夏の空気。

その中で怪談を語っている姿が、最初から頭の中にあった。

だから、とりあえず話してみようと思った。

打ち合わせはZoomだった。

画面越しに軽く挨拶をして、企画の話を始める。

「七夕で怪談ライブをやりたくて」

今聞くとかなり雑な説明だと思う。

でも、その頃はまだ“勢い”の方が強かった。

細かいことより、まずやりたい。

そんな感じだった。

画面の向こうで、牛抱さんが面白そうに話を聞いてくれていた。

それだけで少し安心した。

企画の話をしているうちに、会話が少し横に逸れる。

「地域って、結構怪談残ってたりしますよね」

その言葉が、妙に引っかかった。

「例えば、地元の人しか知らない話とか」

「昔からある噂とか」

画面越しにそんな話をしながら、頭の中で何かが繋がっていく。

地域には、残っている。

語られなくなっただけで、消えてはいない話がある。

子供の頃に聞いた話。

昔から言われている話。

でも、誰もまとめていない。

だったら、集めればいいんじゃないか。

その瞬間、怪談ライブだったものが、少し違う形に変わった。

ただのイベントじゃなくなる。

“地域の物語を残す”

そっち側に、一気に意味が広がった。

画面越しに話をしながら、自分の中だけで勝手に興奮していた。

多分、百物語の始まりはあそこだった。

後からシステムになっていく。

投稿型になっていく。

地域ストーリーに広がっていく。

でも、最初の火種は、あのZoomの会話だった。

打ち合わせが終わったあともしばらく、PCを閉じられなかった。

静かな部屋。

モニターだけが白く光っている。

気づくとスマホのメモを開いていた。

思いついた言葉を、忘れないうちに打ち込んでいく。

「地域怪談」

「集める」

「投稿」

「百物語」

まだ名前もない。

形もない。

でも、あの夜にはもう始まっていた。

怪談ライブより先に。

七夕より先に。

百物語そのものが。

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