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第48話
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百物語|七夕顛末記 #06:怪談ライブ、本当にやるの?

“なんで七夕で怪談?”から始まった話

第48話 / 100話まであと52話

2026/5/8約4分で読めます
百物語|七夕顛末記 #06:怪談ライブ、本当にやるの?

「いや……それ、本当にやるんですか?」

最初にそう聞かれたのは、たしか合宿の数日後だった。

会議終わりの商工会議所。

帰る準備をしていた時、後ろから声が飛んでくる。

「怪談ライブって、ガチのやつですよね?」

振り返ると、半笑いの顔が並んでいた。

冗談っぽく聞いている。

でも、半分は本気だったと思う。

「やりますよ」

そう返すと、

「いやぁ……攻めますねぇ」

誰かが笑った。

その頃には、出店の話で空気がかなり動いていた。

一般公募。

地域団体。

出店エリア。

色んな話が前に進き始めている。

でも、その横で、もう一つ別の話が動いていた。

——怪談ライブ。

正直、かなり異質だったと思う。

七夕祭りで怪談。

普通に考えれば、あまり結びつかない。

「なんで怪談なんです?」

その質問は、本当に何回も聞かれた。

でも、自分の中では割と最初から繋がっていた。

むしろ、七夕だからこそ怪談だった。

祭りの夜には独特の空気がある。

昼間とは違う。

人混みの熱気が少し落ちて、屋台の明かりだけが浮いて見える。

湿った風。

遠くから聞こえる笑い声。

歩いている人たちも、どこか少しだけ気が緩んでいる。

その空気の中に、“物語”を置きたかった。

ただのステージイベントじゃない。

七夕の夜に、少しだけ異質な時間を作りたかった。

怖い話って、人を止める。

歩いていた人間が、ふと立ち止まる。

「なんだろう?」

って、振り向く。

しかも怪談は、夏と異常に相性がいい。

だから、多分成立すると思っていた。

もちろん、不安がなかったわけじゃない。

「いや、誰呼ぶんです?」

「予算どうするんです?」

「人、本当に来ます?」

会議室でも、飲みの席でも、何回も同じ話になる。

まだ出演者も決まっていない。

場所も完全には固まっていない。

今思えば、この時点ではほとんど“構想”だった。

でも、不思議とやれる気はしていた。

根拠というより、感覚に近い。

これをやらないと、多分変わらない。

そんな感覚だった。

今までと同じことを、今まで通りやる。

それで維持はできるかもしれない。

でも、多分、それだけじゃ広がらない。

だから、少し空気をズラしたかった。

「なんで七夕で怪談?」

その違和感自体に意味があると思っていた。

ある日の会議。

資料を見ながら、誰かがぽつりと言う。

「でもまぁ……絶対話題にはなりますよね」

その瞬間、少し空気が変わった。

否定ではなく、“どうやるか”の空気に変わり始める。

多分、この頃からだった。

怪談ライブが、“変な案”じゃなく、“やる前提の企画”として動き始めたのは。

会議が終わって外に出る。

夜風が少しだけ湿っている。

遠くで誰かが、

「いやぁ、でも七夕で怪談かぁ……」

と笑っていた。

その声を聞きながら、少しだけ思った。

多分、そうやって引っかかる時点で、もう勝ちなんだろうな、と。

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