「一回、ちゃんと腹割って話しません?」
合宿の話を出したのは、そんな流れだった。
ここまで色んな話が動いていた。
出店。
一般公募。
怪談ライブ。
会議もしている。
個別でも話している。
でも、どうしても“点”のままだった。
話す時間が足りない。
もっと正確に言えば、
“祭りの話だけをする時間”が足りなかった。
だから、合宿をやることにした。
場所は、メンバーが所有している古民家。
正直、どれくらい人が来るかは分からなかった。
「まぁ数人でも話せればいいか」
最初は、そのくらいの感覚だった。
でも、当日になると、思ったより人が集まった。
車が一台ずつ入ってくる。
「お疲れ様ですー」
そんな声が飛び交う。
古民家の庭では、すでに炭の準備が始まっていた。
肉を運ぶ人。
酒を並べる人。
タープを張る人。
その横では、すでに祭りの話が始まっている。
「怪談ライブ、マジでやるんすね」
「いや、出店側どうなるんです?」
「一般公募、まだちょっと怖いっす」
笑いながら話しているのに、内容はかなり真面目だった。
ただ、不思議と空気は重くない。
会議室で話すのとは、全然違った。
途中から、もう何の話をしているのか分からなくなる。
七夕の話をしていたと思ったら、
「来年度こういうことやりたいんですよね」
別の話題が始まる。
また別の場所では、
「YEGってもっとこうした方がよくないです?」
そんな話で盛り上がっている。
祭りだけじゃない。
みんな、それぞれ色んなことを考えている。
その話が、酒を飲みながら自然に混ざっていく。
それが妙に良かった。
夜が深くなるにつれて、人の距離も変わっていった。
最初は探り探りだった人たちが、少しずつ本音を出し始める。
「正直、最初かなり不安でした」
「いや、俺もっすよ」
そんな会話が普通に出る。
炭火の前。
紙皿と空き缶だらけのテーブル。
遠くでは誰かが笑っている。
その空気の中で、ずっと考えていたことがあった。
——出店、誰に任せるか。
ここまで一番反応していた人がいた。
「それ本当に大丈夫なんですか?」
「既存の人たち納得します?」
出店の話になるたび、必ず止まる。
でも途中から分かってきた。
反対しているというより、“思いが強い”。
祭りを雑に扱われたくない。
出店を軽く見られたくない。
だからこそ、止まる。
しかも、その人はYEGの大先輩だった。
現場も知っている。
人も知っている。
祭りの空気も知っている。
だったら、もう逆に任せた方がいい。
その方が、この施策は強くなる。
「正直、怪談ライブ側で手いっぱいなんですよね」
紙コップを持ったまま、そう切り出した。
「出店側の取り仕切り、お願いできませんか?」
少し間が空く。
でも、思ったよりずっと自然だった。
「わかった。いいよ」
返事は一瞬だった。
周りから「え、マジですか?」みたいな声が上がる。
でも、その瞬間に空気が変わった。
あぁ、多分ここでチームになったんだと思う。
賛成してる人を責任者にするのは簡単だ。
でも今回は、一番真剣に怖がっていた人を前に出した。
だから、多分強い。
合宿が終わる頃には、空が少し白くなっていた。
眠そうな顔で片付けをしながら、誰かが言う。
「これ、毎月やりたくないです?」
周りが笑う。
「いや、でも分かるな」
その空気を見ながら、少し思った。
会議室では作れなかったものが、ここにはあった。

