「で、結局どうするんです?」
その言葉を聞いたのは、たしか二回目の打ち合わせの帰りだった。
商工会議所の階段。
前を歩いていたメンバーが振り返りもせずに言う。
「一般公募って言って、このまま誰でもOKにするわけじゃないですよね?」
少し笑いながら言っていたけれど、半分は本気だったと思う。
#05で火がついてから、空気は完全に変わっていた。
誰もがこの話を知っている。
でも同時に、誰も“着地点”は見えていなかった。
「いや、もちろんそのままじゃないです」
そう返しながら、自分でも思っていた。
——そろそろ形にしないとまずい。
議論を起こすところまでは想定通りだった。
問題はその先。
火をつけるだけなら簡単だ。 でも、燃えたままでは祭りは動かない。
だから必要だった。
——落としどころ。
その頃には、会議の外で話す時間がかなり増えていた。
駐車場。 喫煙所。 居酒屋。
祭りの話は、だいたいそういう場所で進む。
「結局どういうイメージなんです?」
そう聞かれるたびに、同じ話を繰り返した。
「自由化したいわけじゃないんです」
「むしろ逆で、地域で活動してる団体をちゃんと繋げたいんですよ」
最初はピンと来ていなかった人たちも、少しずつ反応が変わっていく。
「例えば?」
「例えば、地域でイベントやってる人たちとか」
「今って、それぞれ別々で動いてるじゃないですか」
「でも七夕って、90万人近く人が来る。だったら、その場所を“接続点”にできると思うんですよね」
その話をすると、黙って聞いていた人がぽつりと言った。
「なるほどなぁ……」
その“なるほど”が増えていく。
もちろん、簡単には決まらない。
「でも、それって誰が選ぶんです?」
「変なの来たらどうするんです?」
現実的な話も出てくる。
そこは曖昧にしなかった。
「YEGで選定します」
「地域活動をしている団体を優先する形です」
そう説明すると、空気が少し落ち着く。
完全自由ではない。
でも、新しい入口は作る。
そのバランスを、みんな探していた。
ある日の会議。
資料を見ながら、一人が言った。
「じゃあ、“地域団体を中心にした出店エリア”って感じですね」
その瞬間、少し空気が変わった。
それまで散らばっていた話が、初めて一つの形になった感覚があった。
「あぁ、それです」
思わず、即答していた。
そこからは早かった。
もちろん細かい調整はある。
でも、“何を作りたいのか”は揃った。
後から振り返ると、この頃からだったと思う。
“反対されている”感覚が、“一緒に考えている”感覚に変わっていったのは。
最初に出した「一般公募」という言葉だけを見ると、かなり強い。
でも、本当に必要だったのは、その言葉の先にある会話だった。
あの時、静かに出していたら、多分ここまで話は進まなかった。
だから、順番としては間違っていなかったと思う。
会議が終わって外に出る。
夏前の夜風が少しだけ湿っていた。
「まぁでも、まだ始まったばっかですよね」
誰かがそう言う。
「ですね」
そう返しながら、内心では分かっていた。
ここから先の方が、たぶんもっと大変になる。

