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ホームストーリー百物語_壱第16話
第16話
夜の百物語

夜桜の池

第16話 / 100話まであと84話

2026/4/16約2分で読めます

茂原公園の桜は有名だが、夜になると、まったく別の顔を見せる。

あれは、満開の時期だった。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った園内を、一人で歩いていた。夜桜は美しいが、どこか現実感が薄い。風もないのに、枝がわずかに揺れている。

池のほとりに差しかかったとき、違和感に気づいた。

水面に、人影が立っている。

岸には誰もいない。だが、水の中にだけ、はっきりとした輪郭がある。

近づく。

その影は、こちらを見ているようだった。

次の瞬間、水面から“手”が伸びた。

ゆっくりと、確実に。

思わず後ずさる。手は水の中に引っ込んだ。あたりは再び静寂に戻る。

そのまま帰った。

家に着いて靴を脱いだとき、違和感に気づいた。

足首が濡れている。

だが、水ではない。

触れた指先に残ったのは——ぬるく、粘り気のある感触だった。

あの池の前を通るとき、今でも足元を見てしまう。

何かが、まだ掴もうとしている気がして。

#茂原公園#夜桜#池#手#水#心霊

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