全て話し終えた。
「以上です。」
そう言って前を見る。
静かだった。
資料を閉じる音もしない。
誰も口を開かない。
時間にすれば数秒だったのかもしれない。
でも、その沈黙だけはやけに長く感じた。
「……俺さ。」
部屋の奥から声がした。
みんながそちらを見る。
その人は資料を机に置くと、ゆっくりこちらを見た。
「正直、この企画が成功するかどうかなんて分からない。」
その言葉に、部屋がまた静かになる。
「でもさ。」
少し間を置いて続けた。
「七夕副委員長の服部君が、本気でやるって言ってるんだから。」
「俺は、それに乗る。」
短い言葉だった。
でも、その一言で空気が変わった。
誰かが頷く。
腕を組んでいた人が姿勢を直す。
「俺も協力するよ。」
「じゃあ、ここは俺がやる。」
さっきまで止まっていた会議室が、少しずつ動き始める。
あの時、賛成されたという感覚はあまりなかった。
もっと違う。
企画に賛成したんじゃない。
人に乗った。
それが一番近い。
後から振り返ると、あの一言がこの事業の分岐点だったと思う。
どんな企画を作るかも大事だ。
でも、それ以上に、
「誰がやるのか」
地方では、その方が何倍も大きい。
企画は資料で伝えられる。
でも、本気だけは資料では伝わらない。
あの日、あの一言で、
企画は初めて"みんなの事業"になった。

