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ホームストーリー百物語_壱第14話
第14話
夜の百物語

終電後のベンチ

第14話 / 100話まであと86話

2026/4/16約2分で読めます

あれは、茂原駅で終電を逃した夜の話だ。

改札のシャッターが半分ほど下りかけていて、駅全体がどこか「終わった場所」のような空気をまとっていた。人の気配はなく、構内に残っているのは蛍光灯の白い光と、遠くで鳴る機械音だけ。仕方なくホームのベンチに腰を下ろし、スマホを眺めながら時間を潰していた。

そのときだった。

「コト…」

と、隣に誰かが座ったような感覚があった。

反射的に顔を上げる。だが、そこには誰もいない。見間違いかと思い、もう一度スマホに視線を落とす。だが、妙な違和感が残る。まるで、すぐ隣に「いる」のに見えていないだけのような。

数秒後、今度ははっきりとした気配があった。息遣いのような、湿った空気の動き。ゆっくりと横を見る。やはり誰もいない。

だが、確実に“何か”がこちらを見ていた。

急に居心地が悪くなり、立ち上がった。その瞬間、背後で「コツ…」と足音が鳴る。一歩遅れて、こちらの動きに合わせるように。

振り返る。誰もいない。

歩き出す。

「コツ…コツ…」

足音だけが、一定の距離を保ってついてくる。

駅の出口に近づくにつれて、その音はわずかに近づいてきた。逃げるように改札を抜ける。外に出た瞬間、足音は止んだ。

振り返ると、ガラス越しのホームに——

誰もいないはずのベンチに、ひとつ分の“沈み”だけが残っていた。

あの夜以降、終電後の茂原駅には、できるだけ近づかないようにしている。

#茂原#茂原駅#終電#足音#気配#無人

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