茂原の住宅街にある古い家を、知人が相続したというので、内覧に付き合ったことがある。
築年数はかなり古く、誰も住まなくなってから数年は経っているらしかった。玄関を開けた瞬間、独特の匂いがした。湿気と、長く閉ざされた空気の匂いだ。
問題は、仏間だった。
古びた仏壇の横に、一枚の写真が立てかけられていた。家族写真だろう。白黒で、少し色あせている。写っているのは、どこにでもいそうな家族だった。
ただ一人を除いて。
写真の一番端に写っている男だけが、明らかにこちらを見ていた。
真正面から。
他の人間は普通にカメラを見ているのに、その男だけは“こちら”を見ている。言葉にしにくいが、視線が合うというより、「気づいている」ような目だった。
気味が悪くなり、その場を離れた。
その日はそれで終わった。
だが翌日、知人から連絡が来た。
「昨日の写真、変なんだけど」
送られてきた画像を見て、息が止まった。
あの写真に——
自分が写っていた。
しかも、あの男の隣に立って、同じようにこちらを見ていた。
その家には、二度と行っていない。
