七夕まつりの準備が本格化し始めた頃。
怪談夜会も少しずつ形になり始めていました。
出演者が決まり、会場が決まり、スポンサーも少しずつ集まり始める。
ようやく、この企画が現実になろうとしていた頃の話です。
私はスポンサー営業をする中で、一つだけ大切にしていたことがありました。
それは、
「協賛してください。」
ではなく、
「この挑戦に価値を感じていただけたら、一緒に地域を盛り上げませんか。」
ということ。
怪談ライブは、今までの七夕まつりにはなかった企画です。
だからこそ、「例年どおりだから協賛してください」という営業はしたくありませんでした。
怪談というエンターテインメントを通じて茂原を知ってもらうこと。
新しい名物を作ること。
そして、その挑戦を地域企業の皆さんと一緒に育てること。
その思いを一社一社お伝えし、共感していただいた企業だけに協賛をお願いしていました。
ありがたいことに、
「面白いね。」
「ぜひ応援したい。」
そんな言葉をいただきながら、少しずつスポンサーの輪が広がっていきました。
私は、この地域にもまだまだ新しいことに挑戦したいと思っている企業がたくさんあることを実感していました。
しかし、そんな矢先のことでした。
一本の電話がかかってきました。
電話の内容は、
「実行委員会へ協賛していない企業から、怪談ライブの協賛を集めるのはどうなんだ。」
という趣旨のものでした。
私は意味が分かりませんでした。
怪談夜会のスポンサーと、実行委員会のスポンサーは目的が違います。
実行委員会の協賛は、まつり全体を支えるためのもの。
怪談夜会の協賛は、怪談ライブという一つの事業を応援していただくためのもの。
私はその違いを丁寧に説明し、納得していただいた企業から協賛をいただいていました。
誰かのスポンサーを奪ったわけではありません。
実行委員会への協賛をやめるようお願いしたこともありません。
企業が自らの意思で、
「この企画を応援したい。」
そう判断してくださった結果でした。
ところが、電話ではさらに、
「怪談ライブで集めた協賛金を、実行委員会へ回すべきではないか。」
という趣旨の話までありました。
私は耳を疑いました。
スポンサーの皆さんは、
怪談ライブという企画に共感し、
「この挑戦を応援したい。」
という思いで協賛してくださいました。
その思いを預かっている立場として、そのお金を本来の目的とは違う用途へ充てることは、私にはできません。
スポンサーとの約束を裏切ることになる。
そう考えたからです。
さらに電話では、
「このままだと来年は七夕で何もできなくなる。」
という趣旨の話や、
「一度謝罪に来た方がいい。」
という話までありました。
電話を切ったあと、私はしばらく考え込みました。
地域のためにと思って始めた挑戦が、なぜこんな話になるのだろう。
私は何か間違ったことをしているのだろうか。
何度も自問自答しました。
そして、一つの問いにたどり着きます。
スポンサーは、誰のものなのか。
スポンサーは、誰かの所有物ではありません。
企業には、自分たちが応援したいと思う活動を選ぶ自由があります。
地域のお祭りを応援したい。
スポーツを応援したい。
文化活動を応援したい。
子どもたちの活動を応援したい。
そして、新しい挑戦を応援したい。
その選択をするのは、企業自身です。
だから私は、
スポンサーを「集める」のではなく、
スポンサーに「選んでいただく」。
その姿勢を大切にしてきました。
価値がなければ協賛はいただけない。
価値を感じていただけたなら応援していただける。
それが本来あるべき姿だと思っています。
この出来事は、私に地域活動の難しさを教えてくれました。
新しいことに挑戦するとき、本当に乗り越えなければならないのは、資金でも人手でもありません。
今まで当たり前だった価値観です。
それでも私は、新しい価値を作り続けたいと思っています。
スポンサーは、誰のものでもない。
地域を応援したいと思った企業が、自らの意思で選ぶもの。
その考えは、あの日も、そして今も変わっていません。

