時計を見ると、もう午前一時を回っていた。
事務所には自分一人。
外は静かで、聞こえるのはエアコンの音と、キーボードを叩く音だけだった。
モニターにはPowerPointが開いたままになっている。
スライドは何枚も並んでいるのに、どこかしっくり来ない。
出店改革。
怪談ライブ。
メンバーの負担軽減。
一つひとつ見れば、どれも悪くない。
でも、並べると別々の企画にしか見えなかった。
「これじゃ伝わらないな……」
思わず独り言が漏れる。
祭りを変えたい。
その気持ちはある。
でも、聞く側からすれば、
「出店を変えたい人」
「怪談をやりたい人」
くらいにしか映らない。
それでは、人は動かない。
椅子にもたれながら、天井を見上げる。
本当にやりたいことは何だったか。
その問いを、もう一度自分に投げる。
しばらくして、マウスを動かした。
一枚目のスライドを全部消す。
タイトルだけを残す。
そして、新しく打ち込んだ。
「三つの柱」
出店改革は、収益を生むため。
怪談ライブは、新しい名物を作るため。
メンバーの負担軽減は、次の世代へ続けるため。
全部、別の話じゃない。
一つの目的に向かうための役割だった。
そう考えた瞬間、不思議なくらい手が止まらなくなった。
一枚ずつ、意味が繋がっていく。
「だから出店改革なのか」
「だから怪談なのか」
「だからメンバーの時間を作るのか」
今まで自分の頭の中だけにあったものが、初めて"他人に説明できる形"になっていく。
気づけば窓の外が少し明るくなっていた。
保存ボタンを押して、椅子から立ち上がる。
「これなら、伝わるかもしれない」
その時、初めて企画書が完成した気がした。

