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第56話
昼の百物語

百物語|七夕顛末記 #14:一本の線

バラバラだった企画が、一つになった夜

第56話 / 100話まであと44話

2026/7/2約2分で読めます
百物語|七夕顛末記 #14:一本の線

時計を見ると、もう午前一時を回っていた。

事務所には自分一人。

外は静かで、聞こえるのはエアコンの音と、キーボードを叩く音だけだった。

モニターにはPowerPointが開いたままになっている。

スライドは何枚も並んでいるのに、どこかしっくり来ない。

出店改革。

怪談ライブ。

メンバーの負担軽減。

一つひとつ見れば、どれも悪くない。

でも、並べると別々の企画にしか見えなかった。

「これじゃ伝わらないな……」

思わず独り言が漏れる。

祭りを変えたい。

その気持ちはある。

でも、聞く側からすれば、

「出店を変えたい人」

「怪談をやりたい人」

くらいにしか映らない。

それでは、人は動かない。

椅子にもたれながら、天井を見上げる。

本当にやりたいことは何だったか。

その問いを、もう一度自分に投げる。

しばらくして、マウスを動かした。

一枚目のスライドを全部消す。

タイトルだけを残す。

そして、新しく打ち込んだ。

「三つの柱」

出店改革は、収益を生むため。

怪談ライブは、新しい名物を作るため。

メンバーの負担軽減は、次の世代へ続けるため。

全部、別の話じゃない。

一つの目的に向かうための役割だった。

そう考えた瞬間、不思議なくらい手が止まらなくなった。

一枚ずつ、意味が繋がっていく。

「だから出店改革なのか」

「だから怪談なのか」

「だからメンバーの時間を作るのか」

今まで自分の頭の中だけにあったものが、初めて"他人に説明できる形"になっていく。

気づけば窓の外が少し明るくなっていた。

保存ボタンを押して、椅子から立ち上がる。

「これなら、伝わるかもしれない」

その時、初めて企画書が完成した気がした。

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