千葉県外房、茂原の町に一人のIT屋が流れ着いた。名前は服部友洋。愛知県豊川市で生まれた彼は、社会人のスタートを陸上自衛隊で迎えた。東部方面航空隊、管制気象隊航務班。基地の空の安全を支える仕事だった。
しかし任期を終えたあと、彼はまったく違う道を歩き始める。最初に始めたのはオンラインの家具ショップだった。「ネットで売れる時代だ」そう思って始めた事業だったが、現実は甘くない。広告戦略も知らず、マーケティングも理解していない。店は静かに閉じた。
次に入ったのはIT企業だった。派遣社員としてのスタートだったが、現場でシステムの設計やプロジェクト管理に関わるうちに、彼はITの世界の奥深さに惹かれていった。数年後、彼はフリーランスとして独立する。企業のシステム開発プロジェクトに入り、PMやPMOとして数多くの現場を渡り歩いた。
大企業のプロジェクトを見ていて、彼はある違和感を覚えていた。「便利な仕組みはたくさんあるのに、地方ではほとんど使われていない」そんな思いを抱えたまま時は流れ、コロナ禍が訪れる。その頃、縁があって茂原に移住することになった。
東京の企業とリモートで仕事を続けながら暮らすうちに、彼は気付く。外房には可能性がある。しかし、情報と仕組みが足りない。2021年、彼は会社を立ち上げた。ITとDXを使って地域の企業を支援する会社だった。
だが、ただのIT会社では終わらない。地域の物語を残し、人と人をつなぎ、町の価値を伝える仕組みを作りたい。そんな思いから、地域の物語を集める「百物語」という仕組みづくりにも関わるようになる。町には、まだ語られていない物語がたくさんある。企業の物語、人の物語、地域の物語。それらを集め、次の世代に残していくこと。それが、外房に流れ着いたIT屋がこの町でやろうとしていることらしい。
