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昼の百物語

茂原のシステム屋と百物語

23話 / 100話まであと77

2026/3/252分で読めます

千葉県外房、茂原の町に一人のIT屋が流れ着いた。名前は服部友洋。愛知県豊川市で生まれた彼は、社会人のスタートを陸上自衛隊で迎えた。東部方面航空隊、管制気象隊航務班。基地の空の安全を支える仕事だった。

しかし任期を終えたあと、彼はまったく違う道を歩き始める。最初に始めたのはオンラインの家具ショップだった。「ネットで売れる時代だ」そう思って始めた事業だったが、現実は甘くない。広告戦略も知らず、マーケティングも理解していない。店は静かに閉じた。

次に入ったのはIT企業だった。派遣社員としてのスタートだったが、現場でシステムの設計やプロジェクト管理に関わるうちに、彼はITの世界の奥深さに惹かれていった。数年後、彼はフリーランスとして独立する。企業のシステム開発プロジェクトに入り、PMやPMOとして数多くの現場を渡り歩いた。

大企業のプロジェクトを見ていて、彼はある違和感を覚えていた。「便利な仕組みはたくさんあるのに、地方ではほとんど使われていない」そんな思いを抱えたまま時は流れ、コロナ禍が訪れる。その頃、縁があって茂原に移住することになった。

東京の企業とリモートで仕事を続けながら暮らすうちに、彼は気付く。外房には可能性がある。しかし、情報と仕組みが足りない。2021年、彼は会社を立ち上げた。ITとDXを使って地域の企業を支援する会社だった。

だが、ただのIT会社では終わらない。地域の物語を残し、人と人をつなぎ、町の価値を伝える仕組みを作りたい。そんな思いから、地域の物語を集める「百物語」という仕組みづくりにも関わるようになる。町には、まだ語られていない物語がたくさんある。企業の物語、人の物語、地域の物語。それらを集め、次の世代に残していくこと。それが、外房に流れ着いたIT屋がこの町でやろうとしていることらしい。

#茂原#企業

思想インタビュー

地域に“物語”を取り戻すために

— 合同会社ブレインマネージメント 代表 服部友洋 インタビュー —

「この地域には、まだ語られていない物語が山ほどあるんです」

そう語るのは、茂原を拠点にIT・DXコンサルティングを手がける合同会社ブレインマネージメント代表の服部友洋氏。現在は「百物語システム」を軸に、地域の魅力を再編集する新たな取り組みを進めている。

IT屋が“地域の語り部”を目指す理由

服部氏のキャリアは一見、地域とは無縁に見える。自衛隊を経てIT業界へ。フリーランスとして上流工程に関わり、複数企業のプロジェクトを推進してきた。

「ずっと“仕組みを作る側”にいました。でも、どんなに良いシステムでも“使われなければ意味がない”。その違いは何かと考えたとき、“人”と“ストーリー”だと気づいたんです」

コロナをきっかけに茂原へ移住。地域と関わる中で、もう一つの違和感を覚える。

「外から見ると魅力的なのに、内側の人ほどそれに気づいていない。これはすごくもったいない」

百物語という“装置”

その違和感から生まれたのが「百物語システム」だ。

怪談という強いコンテンツを入り口にしながら、地域の歴史、体験、人の想いといった“物語”を蓄積・発信していくプラットフォーム。

「いきなり地域の魅力を語ろうとしても、なかなか読まれません。でも“怪談”なら読まれる。その導線を使って、少しずつ地域のストーリーに触れてもらう設計にしています」

単なる読み物サイトではない。スポンサー企業にはブランディング機会を提供し、地域企業とコンテンツを結びつける構造も持つ。

「“広告”ではなく、“地域への投資”としてのスポンサー。この概念を作りたいんです」

DXは“ツール導入”ではない

服部氏の本業はあくまでDXコンサルだ。しかし、その定義は一般的なものとは少し違う。

「DXってツール導入じゃないんですよ。人の行動が変わること。その結果として売上や価値が変わること。それが本質です」

だからこそ、百物語のような“文化側からのアプローチ”もDXの一部だと考えている。

「地域の価値を再定義し、それを伝える仕組みを作る。これも立派なDXです」

外房を“シリコンバレー”に

服部氏が描くのは、単なる一企業の成長ではない。

「最終的には、この地域全体が稼げる構造を作りたい。“外房シリコンバレー化計画”って呼んでます」

IT人材の育成、移住者の流入、地域企業のDX。そして百物語のようなコンテンツが、それらをつなぐハブになる。

「点ではなく、面で変えていく。そのための一手が百物語です」

まだ語られていない物語へ

最後に、読者へのメッセージを聞いた。

「どんな小さな話でもいいんです。あなたの体験、家族の話、地域の記憶。それが誰かにとって価値になるかもしれない」

百の物語が集まったとき、何が起きるのか。

「それはやってみないと分からない。でも、確実に言えるのは“地域の見え方が変わる”ということです」

語られていない物語は、まだこの街に残っている。

そしてそれは、あなたの中にもあるのかもしれない。